あなたに捧ぐ潮風のうた
「何だ、年寄りの様子見にでも来たか。おおよそ、わしが何をするのか不安なのであろう。違うか」
「叔父上……本気なのですか」
なるべく平淡な声音で言うつもりだったのだが、清盛を非難するような口振りになってしまい、背中に冷たい汗が伝う。
「──叔父上……」
「ふん、わしに口出しをするか」
黄色く濁った清盛の眼が通盛を睨みつける。
これでは、まさしく蛇に睨まれた蛙である。
清盛は出家した法師(僧)であるというのに、刀を握るその様子に全く違和感が無い。
元々、彼には出家という言葉は似合わなかったのだろう。
(何か言えば、斬り伏せられるかもしれない――)
何も武器を持っていない無防備の通盛は、開きかけた口を閉ざした。
今の彼なら、甥と言えどやりかねない。