あなたに捧ぐ潮風のうた
何事であろうか、と三人が動きを止めたところで、屋敷の中から複数人の足音が聞こえてきた。それも随分と騒がしい。
「──父上! 父上はいずこにいらっしゃりますか!?」
「……宗盛か。わしは此処ぞ」
「ああ……! 父上!」
父を見つけた宗盛は、履き物をしていないにも関わらず、躊躇無く中庭に降り立った。
「此度の一件、わたしは父上に同く、誠に残念で腹立たしい思いに御座います」
「さようか、ならば――」
「しかしながら!」
一歩前に踏み出した宗盛は、清盛の言葉を遮るように語気を強める。
「弁明なく朝廷に刃向かえば、我ら平家一門、築き上げてきたものは一夜にして瓦解するでしょう。静憲を招き入れ、我らの申し分を法皇様にお伝え申し上げるべきに御座います……!」
その場にいた誰もが父親に従順な宗盛が清盛を諫めたことに目を瞠った。
「どうして平家に悪い所がありましょうか。だからこそ、どうか静憲にお気持ちをお伝え下さい」