あなたに捧ぐ潮風のうた
「姫様、良くお似合いでございます」
「そうかしら」
孝子は気恥ずかしく感じて微笑み、腕を広げて首を傾げた。
すると、呉葉は慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべ、眩しいものを見るときのように、目を細めて孝子を眺める。
「ええ。姫様の母君様のように、とても優美です。まるで、あのお方を目の前にしているようで……」
「そんな、まさか」
「いいえ、姫様はまことにお美しくいらっしゃいます。禁中において、姫様に並ぶものはいないでしょう」
あまりに大袈裟な呉葉の褒言葉に、孝子は暫くの間呆気に取られた後、思わず噴き出し笑いをしてしまった。
彼女は孝子を我が子同然のように愛しているのだ、贔屓目が大きいだろう。
孝子は、呉葉の目に自分がどのような佳人に見えているのか、想像もつかない。
「このような上質な十二単を準備してくださった父上様に感謝しなくてはいけませんね」
孝子は女房装束の袖を広げてゆっくりと一回転すると、呉葉の方を向いてにっこりと笑う。
そんな孝子を呉葉は限りなく優しく見つめていた。