あなたに捧ぐ潮風のうた
平家に刃向かう者らを全て処した清盛は、高倉天皇の言葉を通じて自分の思うがままの采配をした。
奪われた重盛の越前を奪い返すと、再び通盛を越前守に任命し、統治を一任した。
そして全国の国司たちもそろって親平家派、あるいは中間派の者をあてがい、平家の知行国はこの秋津国の半分にまで及んだ。
新たに関白に抜擢されたのは、以前、清盛が権中納言にと推挙した盛子の息子である近衛基通であった。
最早、皇子、関白、法皇ですら、平家の専横に誰も文句を言うことが出来ないのが現状となった。
それが高倉天皇であれ、上西門院であれ、既に出家し、権力を手放したはずの清盛に、何も出来ないのだ。
平家の持つ力と厳島大明神のご加護は、憎らしくは思えど、たかが武士の一門だ、とは侮れないものだった。