あなたに捧ぐ潮風のうた
清盛が大臣らを次々に流罪に処した日から、僅か四日後のことだ。
何故であろうか、朝から肌が粟立つような感じがしていた。
日が昇らぬ内から、暗く落ちた影に何か不穏なものがうごめくような気配が立ちこめると、異様な雰囲気が都を覆う。
明け方の冷たい空気は、今朝は何故か身の毛がよだつような寒気を孕んでいた。
小宰相は毎朝のように上西門院の屋敷の中で自身に与えられた部屋で目を覚ますと、不気味に静まり返る辺りに落ち着かないでいた。
常ならば女房たちの話声や笑い声が聞こえてくるというのに、今朝は誰もいなくなったように静まり返っている。
(最近、なんだか恐ろしいことが続いているわ……)
早まる鼓動に息を呑み、小宰相は胸の前で指を組む。
以前は辻風、ついこの前は大きな地震があった。そして今度はあの平清盛の挙兵、そして高官たちの追放。嫌なものは重なるものだ、と小宰相は顔をしかめる。無意識に力が入る指先は、白くなるまで力が入っていた。
───空気を振るわせる微かな音。遠いところで、喧騒でも起こっているのであろうか。
漠然とした不安が押し寄せる。
背後から突如姿の見えない物の怪が現れたかのように、言い知れぬ何かを感じるのだ。