あなたに捧ぐ潮風のうた

 自室を出た小宰相は、廊下の途中で侍女や女官たちが小声で囁き合っている様子に目を見張った。どの者たちも表情が暗く、中には怯えた顔をしている者もいる。

 まさか上西門院様の御身に何かあったのか──と、小宰相の頭に嫌な予感が過ぎる。

 不規則に速まる鼓動が促すままに、上西門院の元に急ぐ。

 動くのも苦しい女房装束を引きずりながらも、意識は上西門院だけに向けられていた。


「上西門院様……!」

 いつもよりも切迫した声を上げる小宰相は、部屋に入って上西門院の姿を認め、思わず足の力が抜けて床にへたり込んでしまう。

 上西門院は床に伏せっている訳でもなく、むしろ不安げな表情を浮かべる女房たちの中心で、厳しい眼をして座っていた

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