あなたに捧ぐ潮風のうた
「上西門院様、これは一体……」
「ああ、小宰相。来たのか」
上西門院の言葉に、女房たちの目線が一斉に小宰相の方へ向く。
小宰相は、女房たちが袖で目元を押さえ、涙を流していることに息を呑む。
「……先程、法皇様からの使いの者がここに参った」
上西門院の声は全ての感情を抑え込んでいるのか、違和感を覚えるほどに淡々としていたが、目だけは爛々と輝いている。
「清盛入道殿が法皇様を幽閉した、と」
「幽閉?」
「……そうだ。入道殿は法皇様や関白殿に恨みを感じていたのだろう。確かに法皇様と関白殿は、平家に不利益なことをしていたかもしれぬ。だが……だからと言って、お仕え申し上げるべき法皇様を幽閉するなど許されることではない」
言葉を詰まらせた上西門院は、しばらくの間、高ぶった感情を抑えるように呼吸を繰り返していたが、やがて一つ嘆息を吐き、拳を握った。