あなたに捧ぐ潮風のうた

 誰かの話し声がした気がして、小宰相はっと目を覚ました。

(ここは……わたくしは、何を……)

 辺りを見渡すと、ここは見慣れた場所であるのが分かった。上西門院の御所にある女房たちの共通の部屋だ。小宰相はいつの間にか女房たちの部屋に寝かせられていたのだった。

 しばらく事態が把握出来ずに、不思議に思って起き上がると、後頭部がずきりと痛んで思わず顔をしかめた。その痛みと共に徐々に自分の置かれた状況が把握できるようになってきた。

(そうよ、わたくしは上西門院様とお話をして、それから──)

 小宰相は自分がこうなる前のことを思い出し、にわかに青ざめた。

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