あなたに捧ぐ潮風のうた
「……お前は義子に瓜二つだ」
「母上様と?」
孝子は戸惑いの声を上げた。
呉葉も同様のことを言っていたが、孝子はそれを彼女が言ういつもの褒言葉として受け取っていた。
だが、孝子は父の言葉を疑えなかった。父までもそう言うならば、その言葉は決して嘘ではないのだろう。
「ああ。思わず見紛うほどだ」
とても静かな声だった。
孝子の奥の何かを見つめるように、父は目を眇める。
孝子に亡き妻の面影を感じるのだろう。
──今の彼は前妻とその娘に対して何を思うのだろうか。
「……忘れ形見、か。あやつは、憎いことをしてくれたな」
父の言葉は殊の外冷たかった。
忌々しいとでも言いたげな口調である。