あなたに捧ぐ潮風のうた
五の巻 栄華
季節は流れ、風がだんだんと冷たくなってきた冬の始まりの頃、その日の仕事が全て終わって自室に戻ろうとしていた小宰相は、上西門院から呼び止められた。
一体何だろうかと不思議に思っていると、上西門院は「座りなさい」と小宰相を促した。
おずおずと上西門院の目の前に座ると、上西門院は優しく微笑んだ。
「小宰相、越前守からまだ手紙が来ているのでしょう」
(またその話でございますか、上西門院様……)
小宰相は大切な主人からの言葉であるにもかかわらず、自分の顔が渋面になるのを止めることができなかった。