あなたに捧ぐ潮風のうた

 誰も彼もがその話をするからだ。

 今をときめく平家の若き公達に熱烈な思いを寄せられていると聞いて羨ましがられることは多い。

 しかし、一方で法皇幽閉、大臣流罪など、天をも恐れぬ野蛮な行いをした平家かと顔をしかめる者たちもいる。小宰相もその一人である。

 もし仮に父がこの話を進めて縁談を受けることを命じられれば従うほかないが、小宰相自身にはその気がないのだから仕方がない。

「今の時流、平家の方々と縁があるというのはとても良いこと。まだ受け入れる気はないのですか」

 上西門院の問いに小宰相は首を振った。

「平家は法皇様を幽閉した恐ろしい一門です。お受けするつもりはありませぬ」

 頑なになる小宰相に上西門院は柔らかく微笑んだ。

「幽閉したのは入道であって越前守ではないのだから、そこまで毛嫌いする必要はないでしょう。越前守が良い方なのは貴女も知っているはずです」

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