あなたに捧ぐ潮風のうた

 一方の通盛はというと、重衡に習って控えめな笑顔で手を振った。

 あら、意外と越前の君も悪くないわね。と通盛を評する女房の声が聞こえてきて、小宰相は何故かもやもやとこみ上げてくるものがあり、彼女たちから顔を背けた。

「息災であったか」

 上西門院が笑顔で彼らを迎え入れると、彼らはにこやかに挨拶をした。

「はい。本日はお招きいただき誠に光栄でございます」

 丁寧に頭を下げて謝意を示したのは通盛だ。

「かねてより女院様にお会いしたいと思っておりました」

 そう言って蕩けるような微笑みを浮かべたのは重衡である。

 従兄弟同士であるはずだが、小宰相にはどうにも彼らの性質が全く異なっているように思えた。

「中宮と親王は息災であるか」

 上西門院の問いに通盛は頷いて答えた。

「はい。中宮亮となり、幾月か経ちましたが、中宮様は日々健やかにお過ごしでいらっしゃいます」

「言仁親王殿下におかれましても同じく」
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