あなたに捧ぐ潮風のうた
胸に杭を突き立てられたような胸の痛みを堪えたまま、孝子は目を伏せた。
やはり、父憲方と継室の家族にとって、孝子は持て余す存在なのだ。
亡き母と容貌が瓜二つならば、知らず知らずの内に、孝子は父の古傷を抉っているのだろう。
「憲方様!」
呉葉が語気を強めて立ち上がる。その表情は怒りに満ちており、唇はわなわなと震えていた。
父は何かを言いかけた口を閉じると、いつもの表情に戻り、踵を返した。
もう、その視線が孝子に戻ることはなかった。