あなたに捧ぐ潮風のうた
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正月の年中行事も風のように過ぎ、季節は二月になっていた。
辺りは一面雪景色で、吐く息は白く、深く息を吸うと肺まで凍える心地がした。
門脇家の庭の邸宅において、教経が菊王丸に弓の稽古をつけている光景は、最早通盛にとって見慣れたものになっていた。
弟は思いのほか熱心かつ丁寧に稽古をつけており、菊王丸もその指導に応えようとしていた。
菊王丸が離れた的に向かって放った矢は、ほとんどが的中していた。
元より菊王丸は歳の割には力が強く、身体もしっかりとしている。それに教経の教えも合わされば、上達が早いのも当然と言えた。
厠のついでに見始めた稽古の様子だったが、あまりに彼らが集中していたのでこちらも見入ってしまった。
「菊王丸、また上達したのではないか」
部屋の中からその様子を見つめていた通盛が思わず手を叩きながら声を掛けると、菊王丸は驚いたように振り返った。
「通盛様! いつからそちらにいらっしゃったのですか」
「つい先程からだ。朝から熱心に稽古をしていると思って見ていた。なかなかの腕前だ」
そういうと菊王丸は「教経様の教えの賜物です」と照れた様子だった。