あなたに捧ぐ潮風のうた
季節が過ぎて段々と暖かくなるにつれ、ふとした瞬間に通盛がぼんやりとする機会が増えた。
無意識だろうか、小宰相と話している時や一緒にいる時にはあまり見ないものだったが、段々とその機会が増えていった。
気になった小宰相が通盛に尋ねると、彼は慌てた様子で頰を掻き、頭を下げた。
「申し訳ない、貴女の前でそんな顔をしてしまっていたなんて」
「……わたくしが何か貴方の気に障ることでもしてしまったのではないかと思っていました」
「まさか! そんなことはあり得ない」
通盛ははっきりと首を横に振った。
「もし宜しければわたくしにもお話ください」
小宰相の提案にも、通盛は「貴女には心配を掛けたくない」と言う。その言い方は狡いだろうと小宰相は彼の手を握った。
「隠される方が心配になります。わたくしたちは……その、家族なのですから。わたくしではお役に立てないかもしれませんが、悩んでいらっしゃるのならお話ください」
そう説得すると、通盛は少し驚いた顔をした。しばらく思い悩んでいたようだが、通盛は決心したように小宰相に向かい合って頷き、「実は……」と話し始めた。