あなたに捧ぐ潮風のうた
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その日の呉葉による教養の指導も終わり、夕暮れが西の空を彩り始めた。
孝子は『源氏物語』を読みながら、まだ明るい庭の向こうをぼんやりと眺めていた。
紫式部によって執筆された『源氏物語』は、貴族の子息子女には欠かせない物語である。
作中に登場する和歌や文章は素晴らしく、手本として学ぶべきものだ。これらを引用して和歌が詠まれることもあるため、意味を知るにも返歌をするにも、知識が必要なのだ。
和歌は男女の間で交わされるものであり、その才能が恋の行方を左右するといっても過言ではない。良い縁談を得るには優れた和歌の才能が問われる。
庭で砂利を踏みしめる音が聞こえ、孝子は書物から目を上げてそちらを見やった。
庭に立っていたのは義則だった。
「義則、どうかなさったの」
孝子は御簾の中から彼に呼び掛けると、彼は片膝をついて頭を下げた。
「……改めて謝罪に参りました」