あなたに捧ぐ潮風のうた

「何故?」

 小宰相は穏やかな口ぶりで彼に尋ねた。

「何故って……わたしが姫様に無礼な口を利いてしまったからです」

 義則は唇を噛み締めて俯いた。どうやら反省しているようである。

 孝子に二度の謝罪は必要ないと説明したが、それでも義則は悔いているようで、顔をあげる気配はない。

「初めて会ったとき、義則は初めて会ったわたくしに悪い感情を抱いていたように見えました。それは何故ですか」

 訳を話すように促すと、義則は少しずつ話し始めた。

 義則曰く、自分が寺に預けられていた時に、憲方の支援を受ける寺の者たちは、憲方を偉大な人であると日々賞賛していた。

 その偉大な憲方と不仲である娘の話を聞いていたため、娘には一方的な偏見と先入観を持ってしまい、あのような言動に至ったということ。
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