あなたに捧ぐ潮風のうた


 視線で挨拶を促された小宰相は、緊張で顔を赤くしつつ、口を開いた。

「……本日より上西門院様の女房に任ぜられた藤原憲方の娘小宰相と申します。初めての出仕で至らぬこともあるとか存じますが、精一杯務めさせて頂きますゆえ、宜しくお願い申し上げます」

 あまりの緊張に息を忘れるほどであったが、呉葉から叩き込まれた口上と礼儀作法は、小宰相自身も完璧だと思ったほどった。

 優美で上品な小宰相の振る舞いとその面差しに、上西門院を始めとし、あまたの女房たちが感心したような声を漏らす。

「まだ幼いといえども、未だかつて類を見ない美しさよ。宮中でも並ぶ者はない」

 そう言って、上西門院は眩しいものを見つめるかのように、そっと目を細める。

 目尻に寄った皺は歳を感じさせたが、それすらも高潔だった。

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