あなたに捧ぐ潮風のうた
その清盛の弟、平教盛の屋敷は、六波羅の門の脇にあることから、彼の一族は「門脇(かどわき)家」とも呼ばれている。
教盛は兄清盛の恩恵を受け、早々に華々しく出世していた。教盛の子供たちもまた、言わずもがなである。
教盛の長男である通盛(みちもり)は、穏やかな人柄で、学に秀でた文化人だ。
彼は中宮職(ちゅうぐうのすけ)という役職に就いており、中宮徳子にまつわる政務補佐を担当している。
今日の通盛は従弟で中宮徳子の弟である重衡(しげひら)と共に徳子を訪れていた。
中宮徳子の御所は平家一門の憩いの場所となっており、もうじき一歳になる言仁親王(ときひとしんのう)と触れあうため、多くの平家の者が顔を見せる。
「中宮様、わたしが親王殿下の世話役から外れて何月か経ちましたが……殿下は随分大きくなられましたね! 畏れ多くも、おじとして嬉しい限りですよ!」
重衡は言仁親王を抱き上げて頬擦りをする。
彼の言仁親王への愛情が凄まじいのは周知の事実だ。
彼の様子を見た通盛は何とも言えない表情を浮かべた。