あなたに捧ぐ潮風のうた

 通盛は今年で二十四になる。

 長男で嫡男である通盛に女っ気がまるで無いことに、教盛は父として危機感を抱いているのだろう。

 近頃は顔を合わせるたびに北の方(正妻)と世継ぎを求められるので辟易していた。

 通盛の弟も武芸にばかり傾倒する猛者であり、恋というものに興味の欠片も示していない。

 ぼんやりと言仁親王を見つめていると、重衡は眩しいほどの笑顔を通盛に向けてくる。

「子供は可愛いだろう?」

「……分かっているさ、そんなことは」

 従兄弟の中には既に子供がいる者もおり、その成長ぶりを常々聞かされている。

 家族が増えるということは素晴らしいことだ聞かされていたし、通盛自身も夢想することはある。

「だが、好きでもない妻の子供は愛せない。重衡、お前は北の方を愛しているのか」

 思い詰めた表情で通盛は重衡に問う。

 すると、重衡は目を丸くした後、膝に抱えていた言仁親王を中宮徳子に預けた。

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