あなたに捧ぐ潮風のうた

 それから数日後、桜の名所として名高い法勝寺(ほっしょうじ)にて盛大な花見会が開かれた。

 皇族や摂関家、公卿、そして平家の者たちがこの法勝寺に招かれ、共に今が盛りと咲き誇る桜を愛でていた。

 この日、通盛は中宮職として中宮徳子の供で花見会に参加していた。

 当初、通盛は中宮徳子に付き添っていたのだが、彼女は数名の女房だけを連れ、他の参加者と自由に話をしたり、和歌を詠んだりしている。

 折角の花見会だ。手持ち無沙汰な通盛は、中宮徳子の許しを得ると、自分の侍童を伴って花見を楽しむことにした。

 薄く色付く桜は満開だった。
 時折、春風が吹き、遠くで楽師らが奏でる音楽に乗って、薄桃の花びらが儚くも散る様子に趣がある。

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