あなたに捧ぐ潮風のうた


 上西門院の元に参ると、上西門院は同じく参上していた者たちと談笑していた。

 しばらく待っていると、上西門院は通盛や同様に挨拶に来た者たちの存在に気付き、こちらにやってきた。

「通盛、久しいな」

 上西門院は微笑んで通盛に声をかけた。

 五十三歳になった上西門院からは、流石に老いが感じられたが、その老いすらも尊く清らかだ。

 統子は生まれながらの内親王であり、賀茂神社に仕える斎宮に選ばれた。

 実弟・後白河の母代わりでもあった彼女は、斎宮を辞したのち、後白河の尊称皇后(婚姻関係にない妻)となった。

 未婚を貫き、出家して女院となった今は、威厳を兼ね備えている。

 その凜とした佇まいは、放蕩や暗愚やらと影で罵られる弟とは全く異なっている。

「ところで、清盛入道のお身体はいかがなものか。出家されて世間事をお忘れになり、幾分かはよろしいか」

 上西門院は気遣わしげに清盛の容体について尋ねた。
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