あなたに捧ぐ潮風のうた
「なかなか、いえ、弓に関して言えばかなりの才能があります」
(……才能、か)
才能とは天から授かる尊いもの。誰も彼もが持っているものではない。それでも欲しいと願うのはただの欲である。
だから、僅かに心をかき乱す何かを認めてはならない。
通盛は心を苛むものから目を逸らして微笑んだ。
「……そうか。教経、これからもあの子の修練を頼む。お前しか適任がいないから」
教経が一瞬驚いたように目を見開き、さっと顔を逸らして「兄上の頼みならば仕方ありませんね」と満更でもない顔で言うものだから、通盛はつい微笑ましいものを見た気がして、胸のつかえも忘れて心から笑った。
「菊王は良い師を得たものだ」
「才能を開花させるかどうかは、師匠がどう、ではなく自分の努力次第です」
「そう言わず、鍛えてやってくれ」
「あれはまだ童、今は激しい修練をするよりも身体が成長するのを待ったほうがいいでしょう。……まあ、あれが使える大きさの弓を拵えてやってもよいですが」