あなたに捧ぐ潮風のうた
元より教経は他人を思いやれる徳を持った人間であるが、本当に親しい者でなければ心に踏み入れさせない排他的な面も持っている。
菊王丸を教経に任せたのは、これを機に二人の関係が良くなればいいと思ってのことだ。
信頼を置く二人がいがみ合う──弟が過去の因縁で一方的に理不尽な敵意を抱いているともいう──状態は通盛にとっても心が痛む。
そのようなことを思っていると、教経は我に返ったように「兄上。 話を逸らさないでください」と冷たい目で通盛を睨んでいた。
(全く、誰に似たんだか……)
通盛は肩を竦め、教経が知りたがっている件について思案した。