あなたに捧ぐ潮風のうた
「そのように宗盛殿を嫌うな、教経。同じ平家の一門同士で争うことなど不毛だ」
通盛はそう言って弟を諌めたが、弟は首を横に振った。
「……それは分かっております。しかし、兄上。どうかこの弟の話もお聞きください。宗盛殿は貴方が思っているほど徳に溢れた方ではありません」
身分に余る教経の宗盛に対する暴言に答えるわけにはいかなかった。通盛は弟から顔を逸らし、部屋から出て行くように無言で手を払う。
しばらく教経はその場から動かなかったが、再び促してやると、立ち上がって部屋から出ていった。
──門脇家の立場が弱いことをお忘れなく、という言葉を残して。