あなたに捧ぐ潮風のうた

 言葉に熱がこもる小宰相は、義則にあったら言おうと思っていたことをふと思い出した。

「あの、義則」

「はい」

「今、わたくしはしばしの暇をいただいているのですが、ある女房の方が、共に御仏の教えを聴講しに行かないかと仰って……。貴方も、よろしければ一緒に来ていただけませんか」

 それを聞いた義則はふと顔を上げた。

「──お寺に?」

「はい。お寺に参る際には、詳しい方がいらっしゃった方が心強い上、護衛の方も必要ですから……」

 それを聞いた義則は考え込むように表情を動かした。

 珍しく迷っているようである。忙しいのか、単純に気が乗らないのか──小宰相は断られてしまうかもしれないと思い不安になった。

 しばらくの沈黙ののち、彼は「わたしでよければ」と短く返答する。

(どうしたのだろう……)

 小宰相は彼の様子を怪訝に思って尋ねた。

「どうかなさいましたか」

「いえ、寺で過ごした日々を少し思い出してしまって」

 彼はそう言って微笑んだ。

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