あなたに捧ぐ潮風のうた
その女房と付き人たちと共に、鬱蒼とした山の参道に足を踏み入れる。
まるで入る者を拒むように木々が生い茂り、蔦が小宰相の足を捉えようとする。
緩い階段の坂道だが、初夏の湿った暑さでじわりと汗が滲んだ。
たまに頭上を見上げて、神聖な木漏れ日の雨に降られることで、暑さを忘れることができた。
「姫様、大丈夫ですか」
「ええ」
義則の声に後ろをちらりと見ると、彼は階段を物ともせず平然そうに上っていた。
男女の違いがあるとはいえ、よくも息一つ切らさずに上ることができるものだ、と感心する一方で、自分のあまりの体力の無さにげんなりする。