あなたに捧ぐ潮風のうた
「空を見上げる者のみが、それを知り得るのです。この末法に生きる私たちをお救いくださる光は、阿弥陀さまです。ですから、ご自分を阿弥陀さまに預けなさい。信じ、ひたすらに『南無阿弥陀』と唱えるのです。そして、ご自分の唱えた念仏をご自分でお聴きになりなさい。この無明の末法の時代でも、阿弥陀さまは必ず私たちをお照らしになり、浄土に生まれ変わらせて下さいます。阿弥陀さまは、私たちにそうお約束してくださいました」
そう言われ、小宰相は再び阿弥陀如来像を見つめた。
改めて、慈愛に満ち溢れたお姿をしていると実感する。小宰相は“真実”を目にする喜びを噛み締めた。
「阿弥陀さまの御名を唱え、疑うことなく極楽浄土に往生するのだと確信すれば、老若男女、貴賎も関係なく皆全てが救われます」
法話が終わった後も、法然は色々な話をしてくれた。徳のある人とは彼のことを言うのだろう。
小宰相は狭かった視界がすっと広がっていくような気持ちになり、彼の言葉を聞き逃すまいと熱心に聞いていた。
ここへ連れてきてもらった女房は勿論、気が進んでいなかった義則までもが法然の話に聞き入っている。
草庵を後にする時になると、法然は最後まで小宰相たちの背中を見送ってくれた。