わたし、気付けば溺愛されてました。
「匠、なに言ってるの。あなた、なにもできないでしょう」
「新木さんに助けられたのは俺だ。俺が自分で償いたい。車での送迎はできないけど、俺が新木さんの右手と左足になる」
佐伯くんはとても真剣な瞳でわたしを見つめた。
同じクラスだけれど、彼に見つめられたことなんて一度もなかったから思わずドキッとしてしまった。
「それもそうねえ……雫さんさえ、よければだけど……どうかしら」
メイドさんのほうが、家事等、慣れているかもしれない。
だけど、わたしは佐伯くんの気持ちがものすごくうれしかった。
「うん、佐伯くん、お願いします」
わたしが笑顔でうなずくと、
佐伯くんはこの上なく嬉しそうな顔をした。
その表情の裏に隠された──に気付くのは、まだまだ先の話。