わたし、気付けば溺愛されてました。


「う、ううん、大丈夫。ただ、こんな車初めて乗ったから慣れなくて…」


「そっか。すぐに慣れるよ。だってこれからしばらく毎日乗るんだから。もっと遠慮なく、リラックスしていいんだよ。足も伸ばしてね?」


「うん、ありがとう。ふあ……」


もう少し体をシートに預けると同時に、小さなあくびが漏れた。


「新木さん、眠い?よかったら俺の肩にもたれてもいいよ」


「!?大丈夫、大丈夫」


うわ、なんだろ、こそばゆい。


うれしいけれど、そんなの恥ずかしくてできるわけない。


佐伯くんは親切で言ってくれているわけだから、照れる必要はないのかもしれないけど。


あーあ……これ、佐伯くんファンの女の子だったら嬉し泣きするんじゃないだろうか。うんうん。


むしろ代わってあげたいくらいだ。

わたしは司たちのことで頭がいっぱいで、まだ“恋愛の好き”とかそういう感情がよくわからないから。


そんなことを考えながら、静かな車に揺られていた。

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