わたし、気付けば溺愛されてました。
「しずくちゃん、行ってきまーす!」
圭くんをなんとか保育園へと送り届けたわたしは、やっと自分の朝がスタートする。
毎日がこの繰り返し。
大変だけれど、長女として、一番上として弟妹を守っていかなければならない。
今から二年前──わたしが中学三年の梅雨にお母さんが交通事故で亡くなってから、わたしはあの子たちの母親にもなるって決めたんだ。
高二になった今でも、その気持ちは変わっていない。
「………なんか、忘れてるような」
保育園から出たそのとき、急に頭がもやっとしだした。
わたし、なんか今、荷物少なくない?
スクールバッグ………持ってる。うん、持ってる。
お弁当、持ってる。
あとは…………
「ッああー!」
水着玄関に置いてたのに忘れた!!
六月に入り、今日はプール開きがある。
やばい、初っぱなから水着忘れるなんて!!
どうしよう!
もし休んだら、夏休みに補習に行かなければならない。
そんな面倒くさいことはしたくない!
ここは、取りに帰ろう!
そう思って一目散に家まで引き返したわたしの足。