わたし、気付けば溺愛されてました。
今思えば、このとき引き返したのが、すべての始まりだった。
このとき引き返さなかったら。
大人しく補習を受けるはめになっていれば。
わたしはこれからも、これまで通りの生活を送っていたに違いない──。
あーもう!信号早く赤になって!!
願うと同時に歩行者専用信号機が赤色になって、ブンと右足を前に出した。
とにかく急がなきゃ!
脳内はその一心だったが、とある人物が横断歩道の反対側からやって来ているのが視界に映ったことだけは認識した。
………あれ、あの人………。
だけど特に気にとめることなく、足を動かすことはやめなかった。
──そして、その次の瞬間。
キキイイイイイ───!
……………………え。
…………わたし、なにやってんの。
………………………………え。
あー…………終わった。
司、桃、圭くん、ごめん。
わたし──。