レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
十一話
晃に逢えないまま、半年が経った。
あれから、何だか気まずくなって、僕はオウスに赴くことが出来ないでいた。手紙のやり取りはあるものの、以前のように気兼ねない文章というものではなくなっていた。
御互いに、どこか気を使っている。そんな感じが文面から窺える。僕は、晃から来た手紙を眺めながら、そっと息を吐いた。
晃に逢いたい。
だけど、逢うのが怖い。
どんな顔をして逢ったら良いのか分からない。
でも、逢いたい。
自分でも嫌になるくらい、ぐずぐずとした気持ちを引き摺って、気がついたら一日が過ぎている。そんなことを繰り返しているうちに、あっという間に半年が経ってしまった。
僕は自分が情けなくて、盛大にため息をつきながら文机に突っ伏した。なんだか、無償に泣きたくなってくる。本当に、バカみたいだ。
ふと、はちみつ色の光が目に射した。机に垂れたネックレスだ。僕が体を起こすと、一緒に起き上がって、胸に弾んだ。晃から貰った福護石のネックレス。僕は、それをそっと手にとって、首にかけたまま眺めた。
「晃……」
逢いたいな。たとえ、友達だとしか思われてなくても、それでも逢いたい。僕にまた、笑いかけて欲しい。
僕は、ふらっと立ち上がると障子へ向った。障子を開くと、小さく悲鳴が上がった。びっくりして一歩下がると、マルが障子の前に立っていた。
「どうしたんだ?」
「ああ、もしかしたらこれからオウスに行くかと思ってさ」
「え!? なんで?」
驚いて目を見開く。
「僕これから行くんだよ。だから、ついでに誘おうかと思ってさ」
「なんだ。そういうことか」
「他に理由があるの?」
きょとんとしたマルに、「いや」と僕は手を振った。
「で、どうする?」
僕は少し迷ったけど、こういうのは勢いだ。運も僕に味方してくれてるのかも知れない。晃と前みたいになれるように話しをしてみよう。
「うん。行くよ」