レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
「わたし、わたしの代わりに誰かが選ばれて死んでしまったら、きっと罪悪感で生きていけない。そんなに強くないんだ」
晃の声が微かに震えた。でも、僕は構わずに喚いた。
「全然分かんないよ! 自分の命の方が大事だろ!?」
「自分の命より、大事なことはあるよ」
「ないよ! そんなの!」
落ち着き払った晃の声音に対して、僕は子供のように叫んだ。まるで、駄々を捏ねるみたいに。みっともない。けど、それでも構わない。
「火恋様がいるの」
「……火恋?」
僕は反射的に晃を離した。晃の肩を掴んだまま、凝視する。
「それに、弟達。この世界には大切な人がいっぱいる」
晃の瞳は力強かった。
「魔竜がこのまま生きていたら、いずれは火恋様も命を落とすかも知れない。火恋様は今はまだ幼いけど、とても優秀な能力者よ。討伐に借り出されることは目に見えてるわ。そうなったら、火恋様は死んでしまうかも知れない」
晃は一瞬悲痛に顔を歪めて瞳を伏せた。でも再び顔を上げたとき、晃の表情には決意が表れていた。
「そうさせるわけにはいかないの」
「……」
僕は言葉に詰まってしまった。決意の固さが晃の瞳に滲み出ていて、たじろいだ。何て説得したら良いのか、分からない。