レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

 * * *

 僕はしばらく呆然としていた。
 晃は会議へと戻って行ったけど、僕は大広間に行く気力がなかった。

 ただ呆然と自室の障子紙を眺め続ける。障子紙は外の光で薄く透けていた。部屋の中がかなり暗い。日が沈んできた証拠だった。不意に、ぞっとした。

 何も考えないつもりだった。何も考えたくなかったから。だけど、このまま夜になってしまったら、晃は本当にこの世からいなくなってしまう。

 意図せず立ち上がって、僕は焦燥に駆られるまま部屋を飛び出した。
 一心不乱に大広間へ走って勢い良く覗いたけど、部屋の中は空っぽだった。もう、会議が終わってしまったんだ。

 僕は項垂れ、膝を突いた。足に力が入らない。
 泣きたい気がした。けど、涙は流れなかった。

 僕は亡霊のように立ち上がり、空を眺めた。
 日が落ちる。太陽が地平線へ沈みきり、僅かに青を残して暗くなる。

「レテラ」

 僕を呼ぶ、切なげな声に振り返った。
 陽空が眉尻を下げて立っていた。

「そろそろ時間だ。もう、皆出てる。お前は……どうする?」
「……行くよ」

 僕はそう答えた。
 受け入れなくちゃいけない。晃が選んだ選択肢なんだから。そう自分に言い聞かせて、僕は歩き出した。

 だけど、本当は何も考えてなかっただけなんだ。
 受け入れたくなかったから。
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