レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
十八話
僕達は、その日の内に青説殿下の部屋へ出向いた。
はっきりさせておかなくちゃいけないことがある。
「殿下、居られますか?」
障子越しに声をかけると、中から硬い声音で返事があった。
「入れ」
「失礼します」
障子を開けると青説殿下は部屋の文机の前にいた。殿下の部屋は、すっきりとしていた。畳が敷かれた部屋にある物は、文机のみだ。まるで生活感のない部屋だった。
殿下は生真面目そうな、きりっとした瞳で僕らを一瞥する。僕らは部屋の中へ足を踏み入れた。
「先程の話ですが――」
「貴様には関係あるまい。他国の者は黙っておけ」
殿下はぴしゃりと一蹴する。
「ええ。本来ならば、僕が介入する話ではありません。これでも、分をわきまえているつもりです。いつかのように、でしゃばったことは致しません」
「では何故きた」
「僕はただの付き添いです」
にこりと笑うと、殿下は呆れたように息を吐いた。
「また、いつもの筆録か」
「はい」
殿下の仰るようにルクゥ国に籍を置く僕には関係のない話で、本来ならば関わってはいけない出来事だ。でも、全てを記すと決めた以上知っておきたいし、こう何年も一緒にいれば心を開きたがらない殿下にたいしてが情も湧く。晃が愛した人達がいる国ならば、なおさらだ。
だから、マルに事情を話してマルと火恋を伴ってここに来た。好奇心だけじゃなく、きちんと事実を知っておきたい。