レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
五話
それから数ヶ月の時が過ぎて、絶魂や鱗の電磁気を組み込んだ呪符が完成した。
王の表情は終始普通だったけど、時折物悲しそうな顔をする。無理をして笑っているのだろうと思うと、なんだか少し不憫な気がした。
その半年後、転移のコインで各国の代表が犯罪者や動物を連れてやってきた。
完成の報告はもうすでにされていたけど、国際会議が開かれたりして、結局こんなに遅くなってしまった。
国単位で動くとなると、どうしても慎重にならざるをえないのだろう。
我が国、ルクゥ国代表としてやってきたのは、ミシアン将軍だった。
他国の将軍や外交官などが整列する中、将軍はやっぱり群を抜いてかっこいい。
若いのに堂々としていて威厳がある。
僕はなんだか誉れ高いような気持ちになって、自然と胸を張った。
各国の代表たちは、形式的な歓迎の儀が終わると、宴会が催された会場へ向った。
ヒナタ嬢は歓迎の儀にも宴会にも興味がないと言って現れなかった。
(立場上、興味が無くても参加するのが礼儀だろ。っていうか、職務だろ)
僕は呆れかえりながら席に着いた。
各国の代表と僕らはそれぞれ国別に着いたので、僕はミシアン将軍と同じテーブルになった。でも、残念ながら将軍とは一言も喋れなかった。一緒にやって来た外交官や、護送してきた兵士達が将軍にあれこれ話しかけていたり、僕にひっきりなしに近況を訊きにきたりしたので、まったく話ができなかったんだ。
(あ~あ……)
心の中で嘆きながらも、宴会は御開きとなり、将軍一行は帰っていった。
もちろん、転移のコインで。