レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
六話
ぼんやりとした意識の中で目が覚めた。
そこは、もうすっかり馴染みのある部屋だった。条国にあてがわれている自室だ。僕は掛け布団を剥ぎ取ると、ぼうっとしたまま這うようにして立ち上がった。
そしてそのまま茫然と立ち尽くしていた。頭がまるで働かない。何があったか、思い出せなかった。それでも、しばらくそうしていると、気だるさと共に記憶が蘇ってきた。
「魔竜がいて、倒せたと思ったら……」
魂の塊。あれは、一体なんだったんだろう?
降り注ぐ光が強くなったと思ったら、魔竜に襲われたときみたいに意識が遠のいて……。でも、魔竜の咆哮みたく苦痛はなかった。
思考をめぐらせる。だけど、まったく答えが見つからない。というか、考えているつもりで、まったく頭が回ってなかった。僕は考えることを諦めて、布団に倒れこんだ。
もやもやを取り払いたくて、「ああ!」と声を発する。そこに、
「レテラ、起きてたんだね」
突然声がふってきて、僕は飛び起きた。
障子からマルが顔を覗かせていた。
「びっくりした」
「ごめんね。物音がしたから起きたのかと思って覗いたんだ」
マルはそう言うと、心底ほっとした表情をした。部屋に入って、布団の前に座る。
「レテラは三日も寝てたんだよ」
「そんなに!?」
驚いた僕を見据えながら、マルは頷く。
「ヒナタもさっき起きたとこだよ。陽空は二時間くらい前に起きて、今鈍った身体を動かしてる」
「燗海さんと、紅説王は?」
「王は二日前に目覚められたよ。燗海さんは王より少し早かったけど、そんなに変わらなかったな。王の三時間くらい前に目覚めたんじゃないか」
マルは記憶を探るように言うと、
「起きたとこで申し訳ないんだけど、一時間後、大広間に来てくれるか。見て欲しいものがあるんだ」
真剣な眼差しでマルはそう告げた。