レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
* * *
「お待たせしました」
店員が食事を運んできて、晃と僕の前に膳を置いた。僕の方は、鯖の煮付けと、玄米。ナスの漬物と出汁の効いた汁物だった。
僕は苦い顔をしながら、ナスの漬物をどけた。どうにも、漬物ってやつは苦手だった。特に、ナスの漬物は噛むときゅっきゅと歯が鳴る感じがして、ぞわぞわして堪らない。はっきり言って、大嫌いだ。
「食べないの?」
晃が怪訝な表情で訊いた。
「苦手なんだ。漬物って」
「そっか。じゃあ、わたし貰っても良い?」
「晃は好きなの?」
ナスの皿を渡しながら訊くと、晃は、「まあ、普通かな」と、答えた。
「ずっと食べてるから、嫌いなわけじゃないよ。でも、にんじんの漬物は好きだな」
「へえ、それはまだ食べたことないな」
「あんまり漬物って感じがしなくて美味しいよ」
「そうなんだ」
晃がそう言うなら、今度食べてみようかな――そう思いながら、晃の膳をちらりと見た。ころもを纏った豚竜の肉が、食べ易いサイズにカットされている。刻んだキャベツが添えられていて、その横にプチトマトがあった。茶碗の中で玄米が薄黄色に輝く。蓋をされた汁物は多分、僕と同じ物だろう。
「美味しそうだね」
「ちょっと食べてみる?」
「ううん。良いよ。食べたことあるから」
「そうなんだ」
晃はちょっと意外そうに言った。
「条国に何年もいれば、何回かは食べるよ」
僕はにっと笑いながら言って、
「とんかつっていう料理はうちの国にはなかったから、初めて食べたときは驚いたな」
なんだか、懐かしさが蘇ってきた。
「サクサクしててさ。分厚い肉が食べ応えがあったなぁ」
「そのとんかつは豚竜だったの?」
「ううん。豚だったよ。その後、豚竜も食べる機会があって食べたけど。あと、牛肉でもあったな」
「そっか」
晃は楽しそうに笑った。胸がきゅんと締め付けられる。頬が赤くなるのがバレないように、僕はちょっと目線を下げた。
「どれが一番好きだったの?」
「僕は豚かな。豚竜も悪くなかったけど。豚が一番美味しかったな」
「美味しいよね、豚も。わたしも一番、豚のとんかつが好きだよ」
「一緒だね」
晃との共通点が嬉しくて、思わず声が弾んだ。すると、晃は歌うように、「ね」と言って微笑んだ。心臓に愛の矢が突き刺さる。どくどくと脈打って、息が苦しい。
晃、それは反則だ。
可愛すぎて死にそう。
「ルクゥ国と条国の料理で、他に何が違うの?」
晃は興味津々といった感じで訊いた。