レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

 ヒナタ嬢に答えてから、陽空に紹介すると、陽空は嬉しそうに彼女に握手を求めた。が、ヒナタ嬢はその手を軽く睨みつけ、そっぽ向いた。でも、彼はめげないようで、にやつく笑顔を止めない。

「よろしくね~。ヒナタちゃん。何歳なの? つーか、お前ちゃんと〝可愛い〟って言った?」

「……言いました」

 僕は愛想笑いを送った。嘘をついてしまったけど、ヒナタ嬢にそんなことを言えば、僕が睨まれるような気がしてならなかったから、言わなかった。最悪殴られそうだし。

「ていうか、口説くのに言葉なんて要らないんじゃなかったんですかね」

 ぼそっとぼやくと、陽空は若干驚いた表情をして、次の瞬間僕の肩を抱いた。

「お前、結構言うなぁ。気に入った! さん付けは良いぜ。陽空って呼んでくれ」

「それは、どうも」

(手間が省けたな。それにしても、肩が痛いな……)

 陽空の力は結構強くて、掴まれた肩が痛い。さすがは、軍人。文官の僕とは全然腕力が違う。

「んで、お前は何さんだよ?」

「ああ。自己紹介が遅れました。僕は、レテラ・ロ・ルシュアール。十八歳になったばかりの若輩者ですが、通訳と、記録係としてこの任務に携わらせていただくことになりました。よろしくお願いします」

 僕が軽くお辞儀をすると、陽空は納得したように手を叩いた。

「ああ、お前がそうなんだな。俺の国じゃ、母国語以外喋れるやつなんて滅多にいなくてよ。言葉どうすんだって思ってたら、王が月国から一人通訳が来るからそいつに頼れって言っててさ。お前がそうだったんだなぁ」

 陽空は感心するように言うと、僕に手を差し出した。

「レテラ、よろしくな」

 僕はその手を握り返す。

「こちらこそ、よろしく。陽空」

 
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