レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

 条国にも神束(かみつか)という宗教があって、条国人の殆どがそれに属しているけど、熱心な信者という者にあったことがない。

 無宗教のように見えるのに、神というものも念頭においていたりする。宗教観に関しては、結構変わった人達だと思う。
 だからなのか、他国の人達よりもこれからどうなるのかと心配する声は多かった。

「それはね」
 晃は零すように言って、

「今までみたいに紅説王が何とかしてくださるとは思ってるの。皆そうよ。でも、やっぱりね。不安は不安だよ」
「だよな」

 僕は同意を送ってとんかつに箸を伸ばした。でも、掴む気になれない。ためらっていると、晃は窺うように尋ねた。

「研究はどう? 進んでる?」
「う~ん」

 僕は唸るように言って、「実は、そうでもない」と、白状した。

「魔王の第三弾を創ろうって話も出てるんだよ。でも、王が反対なさっててね。マルもまだ早計だって」
「どうして魔王を創るの?」
 晃は不思議そうに訊いた。

「この五年で解ったことなんだけど、魔竜は、どうやら魔王の中ある魂の影響で様々な能力が使えるようになったらしいんだ」
「へえ。そうなんだ」
 晃は物珍しそうに頷く。
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