レテラ・ロ・ルシュアールの書簡

「うん。魂に能力が宿っていて、それを引き出して魔竜は使っているんじゃないかってマルたちは考えたんだけど、それを発表したらさ、じゃあもう一度魔王を創って、魔竜みたいに適応出来る者を捜せば、魔竜に勝てるんじゃないかって意見が各国から出てさ。今、推し進める動きが強いんだよな」

「そうなんだ。だから、紅説王は反対なさってるんだね。多くの魂がいるから。しかも、今度は能力重視になるわけだから、人間が必然的に多くなるんだもんね」
「ああ」

 晃はやっぱり頭が良い。今の会話で、今度は人間を多くするって気づくんだもんな。僕は感心しながら相槌を打った。それにしても、魔王の中に魂があるって話をしても驚かないってことは――。

「晃はやっぱり知ってたんだな。魔王の中に魂がいるって」
 僕は独り言のように尋ねた。晃は、当然のように頷く。
「うん。一応話は入ってきてる」

 魔王が魂をもって創られてるということは公には発表されてない。各国が口裏を合わせて、秘密裏に伏せられていた。やっぱり、後ろめたい気持ちはどこかにあるんだろう。

 まあ、その事実を知れば多かれ少なかれ国民から非難の声は上がるだろうし、それくらいの予測はどこの国でもしてるだろうから、当然っちゃ当然だな――と、僕は思いつつ、会話を続けた。

「火恋は次の王だからな」
「うん」
 晃は心配そうに眉を顰める。

「大丈夫だって。火恋が王になる頃には片付いてるよ」
「だと良いんだけどね」

 顔を曇らせながら晃は呟いて、突然跳ねるように顔を上げた。はっとした表情で、「ごめん」と謝る。僕はきょとんとしてしまった。

「レテラ達は頑張ってるのに……」
「ああ、なんだ」
 僕は思わず頬が緩んだ。晃は優しいな。
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