レテラ・ロ・ルシュアールの書簡
晃の窺うような声音に顔を上げる。すると、晃は首筋を掻くようにして触りながら、おずおずとジュエリーケースを差し出した。
「?」
僕は首を傾げながらそれを受け取る。長方形の、灰色のケースだった。形状から、中に入ってるのは多分ネックレスだろう。
ケースを開いて、僕は息を呑んだ。
地平線付近に浮かぶ月のように黄色く、荒削りのごつごつとした少し尖った、小さな石がケースの中で横たわっている。
「これって……」
「福護石だよ」
言って、晃ははにかんだように笑った。
「福護石ってルクゥ国の石じゃないか」
「うん。でもこっちでも売ってたから。――懐かしいでしょ?」
「うん。すごく。これ、もしかしてくれるの?」
「よければ」
「ありがとう」
晃からプレゼントを貰えるなんて思ってもみなかった。すごく嬉しい。でも、同時にすごく情けない気がする。女性から先に貰うだなんて。僕が先に晃に何か送りたかった。
これまでも何回かアクセサリーか何かを送ろうと考えたことはあったけど、ただの友達として接してるのに、渡して良いものか考えて結局買えずにいたんだよな。
「福護石って持ってる人のことを守ってくれるって言われてるんでしょう?」
「うん」
(一回だけだけどね)
心の中で呟いたけど、絶対口にしない。
「もしかして、僕のこと心配して?」
期待を込めて訊いてみる。晃は照れくさそうに笑んで、こくんと頷いた。
(ああ、やっぱり好きだな)
胸が熱い気持ちでいっぱいになる。もう、告白してしまおうか。火恋だって後六年かそこらで成人なわけだし。今告白したって、迷惑にはならないはずだ。
「あのさ――」
僕が意を決して口を開いたときだった。
「友達の心配するのは当たり前じゃない」
晃は弾けんばかりの笑顔で、残酷なことを言った。一瞬、僕の心臓は鼓動を止めて、思考も停止した。
〝友達〟
「……だよね」
そう呟くのが精一杯だった。
そんな笑顔で言われたら、それ以上の感情がないことなんてバカでも分かる。僕は泣きたい気持ちを堪えて、もう一度、「ありがとう」と言った。