【短】FRIEND Ⅲ
「桐也くん、どうしたの?」
「や。なんでもねぇよ」
ふうっと溜息を付けば、驚くほど早いスピードでそれに気付いて声を掛けてくる、彼女の優しさに、一瞬泣きそうになる。
それを振り切って、言葉を掛けようとしたら…。
「凛!一緒に帰ろ?」
と、横槍が…いや正しくは本物のヒーローが、現れてしまう。
「う、ん。でも…」
ちらりと、俺の方を見る彼女。
まだ山積みのプリント。
「いいよ。これは俺がやっとくから。彼氏と帰れよ」
そんな風に言って、自分で自分を傷付けた。
「大智くん、今日は先に帰って?私まだやることあるから」
彼女の言葉は強かった。
誰にも有無を言わせないくらいに。
その証拠に、彼氏はなんの文句も言わずに帰ってしまったし、俺は無言で作業の続きをされられている。