恋とさくらんぼ
「まあね。それに俺は、」

こちらを向いて、微笑を浮かべながら、彼が口を動かした。

「……? ごめん、聞こえなかった」

桜は若干眉根を寄せながら数歩宮沢に近づく。

彼は首を伸ばして耳元に顔を寄せ、

「……!?」

そのまま頬に口づけた。

「い、今、今なにを……!?」

「手伝ってやってんだから、あんたも掃除しろよ」

「違う、なにか違う。そうじゃない」

ぶんぶん首を振ると、彼はにやりと笑う。

「ふうん、じゃあなに? もう一回、キスしてほしい?」

「ばっ……!?」

桜は宮沢から飛び退いた。リビングの扉まで後退して、顔を半分隠して覗く。
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