恋とさくらんぼ
顔面が引きつっている桜を──桃、を、見て、女子生徒らが心配そうにしている。

「桃、どしたの? なんか元気ない?」

「……あははー、実は、朝からお腹痛くて」

「えー大丈夫? 保健室いく?」

「……どうしよっかなー! 保健室でサボっちゃおーかな」

「なあんだあ、元気じゃん!」

「もーバカ! そんなことしてたらますますバカになるよー!」

甲高い声で笑う女子たちが信じられない。

なんだか目眩がしてきたような気がする。本当に保健室にいきたい気分だ。

「おーすー関谷はよー」

今度は誰だ。男子だ。女子より苦手だ。

「おはよー」

軽く笑って挨拶を返す。うん、慣れてきたと思う。

ところがその男子は、驚いたように動きを止めた。
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