恋とさくらんぼ
「まだ質問の答えをもらってない」

「……質問……」

「覚えてないなら何度でも言うけど。あんたは誰?」

「…………」

どっと疲れが押し寄せてきた。

もうなんなんだこの人は。

今目の前にいなければ、ベッドに倒れ込んでいるところである。

「……関谷、桜だよ」

桜は重たい口を開き、とうとう言ってしまった。

桃にあれほど、素性をバラすなと口うるさく言った立場がない。

ちょっと投げやりになっている部分もある。

「……桜?」

「桃の双子の姉です。……あの、秘密にしておいてもらえるんですよね?」

「ああうん。言っても誰も信じないだろうし」

桜は僅かに眉を上げた。

もし言いふらされても否定すれば問題ない、と桜も思っていたのである。
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