恋とさくらんぼ
桃は首を傾げた。

頭はまだ多少痛いが、肩はそうでもなくなってきたし、日常生活に支障はない。牧野はそんなに気に病まなくていいのだ。

罪悪感っていうのは、考えれば考えるほど胸の奥から湧き出てきて、どうしたって、いつになったって消えないものなんだよ。

そう教えてくれたのは桜だ。

だから、なるべく彼の罪悪感を減らしたいと思う。

牧野は目を見開いていたが、しばしの後にふっと微笑んだ。

「……っ!?」

桃は一瞬で真っ赤になる。

優しい笑み。あのとき、彼に一目惚れをしたときと、同じ。いや、それよりももっと、柔らかくて甘いような。
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