恋とさくらんぼ
「桜ちゃん、お風呂空いたよー」

「……了解ー」

桃が頭をタオルで包んで自室(二人部屋)の扉を開けると、桜が悄然とした様子で椅子に腰かけていた。

「さ、桜ちゃん、どうかした……?」

「いやなにも。それより、はい」

「?」

桜が桃に手渡したのは、桜のスマホだった。

「なんで?」

「牧野くんから連絡がきた」

「なっ……!」

そういえば牧野は、“桜”を試合に誘ったので、桜の端末に連絡がいくのが当たり前なのである。

「ど、ど、どうしろと……」

「どうにでも、桃がしたいようにしなさい」

どことなく姉は投げやりだった。こういうときはだいたい、どうにもならないことを考えているのだと、桃は知っている。
< 43 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop