恋とさくらんぼ
「えと……わかった。ありがと」

「ちゃんと髪乾かしなね」

ぽんぽん、とタオルの上から、軽く頭を叩いて桜は出ていく。

その後ろ姿と、揺れる長い髪を、桃は目で追った。

長さも髪質も同じはずなのに、桜の髪の方がつややかで、まとまって見える。

桜は髪の手入れを欠かさないからだ。

「……」

桃は生乾きの自分の髪を一束、左手に取る。

「……」

続いて右手のスマホの、牧野からのメッセージ画面を見る。

……。

桃は二段ベッドの上に寝転がった。
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